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もたつく国 被災地と溝 避難所冷房自治体任せ 補正遅れ街づくり妨げ / 集団移転具体化足踏...

■題 名 もたつく国 被災地と溝 避難所冷房自治体任せ 補正遅れ街づくり妨げ / 集団移転具体化足踏み 被災地、国方針見えず
■日 付 1899年12月31日 ■大分類 新聞等(読売)
■概要 ◇避難所冷房自治体任せ 補正遅れ街づくり妨げ
(熱中症対策)
 避難所の熱中症対策と仮設住宅の敷地の砂利対応を急いでほしい。新潟県中越地震を山古志村(現在は長岡市)村長として経験した自民党の長島忠美衆院議員は、5月30日の衆院東日本大震災復興特別委員会で訴えた。避難所となっている学校の体育館は「昼間は大型の冷房機でも冷えない。若者は働きに出るが、熱中症の被害を受けやすい高齢者が残る」と警告。敷地が砂利の仮設住宅には「高齢者には砂利の一粒一粒が歩く障害になる。手押し車の人もいる」と懸念を示した。
(3次補正)
 本格的な復旧・復興のための2011年度第3次補正予算案の編成の遅れも被災地の街づくりの妨げとなっている。特例公債法案がやっと成立する運びとなり、菅首相の退陣時期が近づいたとの見方が強まる一方、「じきに辞める首相の下で、3次補正の内容は詰められない」(政府筋)という状態が続いている。
 国土交通省と県、市などでつくる「釜石港復興会議」は、5年以内の防波堤復旧を目指し、同省は約4百数十億円の復旧費を3次補正で要求する方針だ。だが、菅政権は復興基本方針で高台移転などで被害を抑える「減災」を打ち出した。そこには「地方の言いなりで立派な堤防を造り直したら、復興費はいくらあっても足りない」(政府関係者)との含意もある。釜石市側は「防波堤が元の通り復旧されることを前提としないと、復興の議論は前に進まない」と訴えるが、3次補正の編成の過程でその溝がどこまで埋まるか、今なお見えない。
(がれき処理)
 福島第一原発から20キロ圏内の警戒区域では手つかずで、警戒区域外の福島県いわき市でも、県内最大の123万トンのがれきを抱えながら、分別処理に追れ、焼却などの段階に進めない。
 中でも、放射性物質に汚染されたがれき処理は難題だ。環境省は6月下旬に処理指針をまとめたが、一時保管後の焼却灰の処分方法などは10日になるまで示されなかった。この間、地元は「とても処理を進められない」(いわき市の担当者)と戸惑い続けた。

◇集団移転具体化足踏み「補助拡大ないと破綻」の声
 津波被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸市町村のうち、約7割が高台や内陸部などへの「集団移転」を検討し、宮城県では約4000世帯が移転に「合意」していることが明らかになった。国の財政負担割合を高めてほしいという自治体側の要望がどこまで実現するか不明な中、被災自治体の移転計画は足躇み状態が続き、早く生活を再建したい被災者からは焦りの声も聞こえてくる。
(国への不満)
 7月に復興計画骨子を発表した岩手県釜石市の計画では、高台への住宅移転と土地のかさ上げを基本としたが、浸水区城の区画整理なども含めた総事業費は国負姐分を含む2000億円程度と見込む。市の年間予算は約180傭円。「国にほとんど負担してもらわないと無理」と担当者。
 政府が7月29日に決めた復興基本方針には、復興構想会議が提言した「高台移転」は明記されず、その代わりに「地域の実悄に即して多様な用途の立地が可能となるよう、土地の買い上げ等も可能な『防災集団移転促進事業』を総合的に再検討する」とされた。国がどれだけ財政支援するかは、3次補正予算などを待つことになるとみられ、それまでは「復興を担う行政主体」とされた被災市町村も、復興計画を具体化しにくいのが実情だ。
(集団移転事業)
 集団移転を検討する市町村は、国の防災集団移転促進事業の活用を想定する。宮城県気仙沼市では3地区336世帯が集団移転で「合意」しているという。同事業は現行では国が75%、市町村が25%を負担するが、市町村負担分には特別交付税の補填措置があるため実質的な国負担は94%。ただ、気仙沼市の担当者が指摘するのは、国の負担額に「上限」があること。この上限額は地域によって異なるが、同市の場合、「戸当たりの(国と市を合わせた)補助上限は1655万円。これを超えた費用は市で持つしかない」「1戸当たりの費用が上限を超える可能性があり、上限を撤廃してもらわないと高台移転できない」とする。ほかにも移転を検討する地区があり、最終的な規模はまだ読めないという。
 
◇住民「一日も早く」
(先行例を視察)
 宮城県気仙沼市唐桑町舞根(もうね)地区の住民22人が5月末、新潟県長岡市を訪れた。中越地震で防災集団移転促進事業を活用し、18世帯77人が集団移転した集落を視察するためだ。舞根地区の住民組織の会長・畠山孝則さんが知りたかったのは集団移転のスピードだ。長岡市の住民らとの意見交換で、国が移転に同意したのは被災9か月後と聞かされ、「災害規模は違うが動きが早い」と驚いた。「役場に繰り返しお願いしたことが、国を動かす原動力になった」とも教えられた。
 視察から戻った2日後、畠山さんらは気仙沼市の菅原茂市長に要盟書を提出。「このままでは地域のコミュニティーが崩壊する」と訴えた。しかし、市の担当者は「今の制度は自治体の負担が大きすぎる。国の方針が決まらないと動けない」の一点張り。共に移転を目指す住民が同じ避難所で暮らしていた頃はいつでも話し合えたが、3か所の仮設住宅に分散した7月以降は会う機会が激減した。
(粛々と準備)
 宮城県東松島市の立沼地区も揺れている。65世帯がいったんは集団移転に合意した。しかし、その後、40世帯ほどが半壊した自宅を修理するなどし「移転時に土地や農地が十分補償されないなら、ここに残りたい」という住民も出始めた。
 東松島市では立沼地区を含む7地区計約3000世帯が集団移転に「合意」しているという。市は各地区の意向を踏まえ、内陸の候補地を選定し、地権者の了解もほぼ得ている。阿部秀保市長は「政府の対応の遅れを枇判しても始まらない。熟度の高い移転計画から優先的に予算がつく可能性もあるので、粛々と準備を進めるだけ」と話す。
(合意作り難航も)
 住民の意見集約が進まない例もある。仙台市は5月に示した「復興ビジョン」で、沿岸地区の住民を内陸に集団移転させる方針を表明。移転対象は21地区約3200世帯に上ると想定する。しかし、これまでに前向きな意向を市に伝えたのは荒浜地区(若林区)の約311世帯だけ。移転反対諭が根強く残り、調整が難航する岡田地区(官城野区)の町内会長・中島正志さんは「農家が住民の3割を占め、残りたいという人が多い。きちんと住民の意見を聞いてから青写真を描いてほしい」と困惑する。
 宮城県女川町も、漁村をある程度集約して住居を高台に移す計画だったが、「海が見える場所に住みたい」「住み慣れた浜ごとに移転先を作ってほしい」などと住民の反発か相次ぎ、見直しを進めている。
■タグ 読売 仮設住宅 第3次補正予算 釜石市 いわき市 高台移転 防災集団移転促進事業 気仙沼市 舞根地区 東松島市 立沼地区 仙台市 荒浜地区 女川町
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■管理番号 No.01482


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