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【時事解析】 復興と漁業改革 連載1〜5

■題 名 【時事解析】 復興と漁業改革 連載1〜5
■日 付 1899年12月31日 ■大分類 新聞等(日経)
■概要 ■1)企業参入への特区創設 漁協優先を転換 @日経新聞(2011.11.7)
 漁業法は「漁業の免許は優先順位によってする」(15条)と定めている。宮城で盛んな養殖業の漁業権(特定区画漁業権)の優先順位1位は漁業協同組合である。地元漁民が企業の出資を受けたり、経営者、社員になったりする法人は2位(漁民世帯の7割以上を含む法人)、または3位(漁民7人以上で構成する法人)。漁協が取得を希望する限り、法人の漁業権取得は難しい。
 水産庁の「漁業権の優先順位に関する実態調査」(09年)では全国7319件の養殖漁業権のうち「漁協以外の法人」への免許はわずか57件。宮城県は655件中ゼロだ。
 全国漁業協同組合連合会は「現行でも企業参入は可能」という。漁協組合員になれば法人も漁業権を行使でき、実態調査でも全国で755件ある。しかし、組合員になるため規模を小さくしたり、資材や飼料の購入を求められたり、企業は完全には力を発揮できない。

■2)個人から共同経営へ 担い手を育成 @日経新聞(2011.11.8)
 高齢化、後継者難は被災地の漁業復興に暗い影を落とす。宮城県漁業協同組合(JFみやぎ)が4月、約1万人の組合員に面接調査したところ、約2700人が就業継続に否定的だった。
 水産庁の「水産復興マスタープラン」(6月)が示す沿岸漁業の再建策の柱は2つ。漁船など生産基盤の「共同化」と、加工・販売との連携による「6次産業化」だ。震災にかかわらず「効率的かつ安定的な経営の育成」は、01年の水産基本法の制定以来、水産行政の重要な目標の一つだ。基本法はその手段として「事業の共同化」と「新規参入」を進めることを明記。加工業、流通業の役割も重視する。漁業権制度見直しを求める声が台頭するようになったのも、基本法制定論議がきっかけである。

■3)資本不足の漁協 事業主体の力なく @日経新聞(2011.11.9)
 被災地では復旧・復興の事業主体として漁協への期待も大きい。しかし、漁協にその期待に応える資本力はない。岩手県では2007年に山田湾漁協が経営破綻。震災時も沿岸7つの漁協が、欠損金解消のため事業の総点検が必要な要改善漁協として再建途上だった。共同利用を条件に漁船を復旧すると3分の2の補助が出るが、被災した個人に代わって漁協が事業主体となろうとしても残る3分の1の自己負担が重い。岩手県は独自補助を積み増し、漁協の負担を9分の1に減らした。
 宮城県漁協は7月、資本力に比べ「リスクが大きすぎる」として、共同利用漁船の保有を「最低限」にする方針を決定した。漁船の多くは県水産公社に保有を肩代わりしてもらう。組合員に出資を求め、漁船保有専門の組織を新設する予定だ。

■4)譲渡可能な個別割当制度 経営集約進むか @日経新聞(2011.11.10)
 日本経済調査協議会は震災後、養殖業やアワビ漁など沿岸漁業で、譲渡可能な個別割当制度(ITQ)を提案した。米国、ニュージーランドなど欧米諸国に導入例がある。日経調の提言執筆者の一人である小松正之・政策研究大学院大学教授は、ITQを導入すれば、ITQを担保に復興資金を調達でき、ITQの売買を通じて漁業経営の集約・大規模化が進むとみる。漁協の役割を「漁業者自立の手助け」に限定し、漁業権の管理、運用から漁協の関与を外す。
 ただ、「資本力があるものが権利を独占するという戦前のような状況に戻る」(加瀬和俊・東大教授)という批判はある。水産総合研究センターの牧野光啄・漁業管理グループ長らの研究では、資源管理手法は「漁船のトン数制限」から「一方的な誓約」まで78種類ある。制度の必要性や効果も漁獲対象や地域事情により異なる。「被災地復興にあたっては、沿岸漁業の目的や国家戦略を十分に議論する必要がある」(八木信行・東大准教授)との指摘もある。

■5終)過剰漁船の解消 資本導入か廃業か @日経新聞(2011.11.11)
 世界銀行の報告「沈んだ大金」(2008年)によると、漁業資源の管理の失敗による経済的損失は年間500億ドル、過去30年で2兆ドルになる。魚が減っているのに漁船の漁獲能力は拡大し生産性が下がる。悪循環を断つには、減船や休漁で漁獲能力を減らし資源の回復策をとらなくてはならない。被災地の漁業再建の道筋を示す「水産復興マスタープラン」も、漁獲能力抑制が望ましい対象として「大中型まき網漁業」「沖合底引き網漁業」を例示している。
 07年の漁業法改正で漁業許可の適格性に「経理的基礎要件」が加わった。燃油高騰を考慮し、許可取り消し対象は破産企業など一部に限定して運用中だが、慢性的な債務超過企業の一掃が本来の狙いである。外部資本の導入か、廃業か。厳しい選択を迫られている漁業者も多い。
■タグ 日経 時事解析 漁業 漁協 漁業権 漁業法 個別割当制度 漁業資源管理
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■管理番号 No.02729


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