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【大震災に寄せて】政府は安易に権力行使するな 遠い夢の前に近い現実を 外交評論家 岡本行夫...

■題 名 【大震災に寄せて】政府は安易に権力行使するな 遠い夢の前に近い現実を 外交評論家 岡本行夫
■日 付 1899年12月31日 ■大分類 新聞等(産経)
■概要 (被災地で異なる復興のかたち)
 被災地の復旧は、日本の最優先事項だ。「復興構想会議」に期待が集まる。課題はスピードだ。遠い夢の前に緊急に取り組むべき現実がある。
 阪神大震災では、神戸の113本の岸壁が壊滅した。指揮にあたった当時の第3港湾建設局長は全てを2年間で修復してしまった。現場の官僚たちに任されたから、このような離れ業ができた。
 復興の態様は個々の被災地によって興なる。「住宅地域は高台に」と言っても、背後には急な山しかなかったり、高台の莫大なインフラづくりが実際的でない街もある。堤防再建にしても、より大きな築堤に適したところもあれば、「堤防は高潮だけを防げぱいい。そのかわり津波に対して逃げ足の速い町を」と考えている町もある。個別事情への配慮が大事だ。隣の町と一緒の統合計画も有用かもしれない。

(漁業への緊急支援)
 重要なのは産業の復旧、特に漁業だ。町の経済の5剖以上が水産関連のところも多い。それが壊滅した。なのに、支援はまだ始まらない。
 「まず中央で全体の復興計画を作ってから」という姿勢では間にあわない。第1次補正予算の執行に時間をかけないでほしい。南三陸町ではNGOながら1億5000万円もの資金を準備して、漁場のがれき撤去を始めた団体もある。大事なのはスピードだ。
 漁期を逸すれば、収入は来年の秋まで無い。今はまだ関係者に気概が残っている。だが、あてのない無収人状態が続けば、家族をかかえた30代、40代の漁師は絶望して海を去ってしまう。そうなれば、三陸沿岸の経済復興はできなくなる。
 行政は応急手当てを考えてほしい。三陸には、海にいて難をまぬかれた漁船も少なくないし、他県籍の漁船も入港して水揚げする。拠点漁港をいくつか決めて応急修理してほしい。

(素晴らしき日本人の能力)
 日本人の資質は累晴らしい。国の指導者は頼りなくても、現場の人々の対応能力は高い。被災地でがれき撤去が確実に進行しているのは、作業が現場に任されているからだ。日本の産業も現場が支える。いったん方向が定まれば、ものすごいパワーが発揮される。だから新しい目標を早くつくろう。

(日本に必要な開放化)
 福島原発の事後の直後、米国は原子炉冷却装置の提供を申し入れてきた。しかし日本は断った。政府部内の会議では、「受け入れれば米国にデータを盗られてしまう」との意見が出たという。われわれは他国の技術に謙虚でなければならない。日本は自力解決にこだわって、世界からの支援を受け入れるのが遅すぎた。開放系でない社会は落伍する。
 日本は、これまで高い平均値の同質民族国家であることを誇ってきた。いったんマニュアルが作られれば、その実行能力は世界一である。しかしマニュアルに書かれていない事態への対応能力は高くない。それを補うためにも、世界の才能と多様性を受け入れるべきなのだ。そして、今度こそ世界から称えられる国家になろう。
■タグ 産経 コラム 岡本行夫 復興のかたち 漁業 がれき撤去 開放化
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