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【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編1-6

■題 名 【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編1-6
■日 付 1899年12月31日 ■大分類 新聞等(読売)
■概要 ■【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編 1「1000年に1度」どう備える 自然災害阻止には限界 @読売新聞(2011.12.16)
 1000年に1度という超低頻度の災害や過去の常識が通用しない極端気象に、どこまで備えればよいのか。岩手県宮古市田老の高さ約10メートルの防潮堤は津波が乗り越え、普代村の15メートル超の水門や洋野町の12メートルの防潮堤は津波を防いだ。
 田老防潮堤の建設費は当時の金額で4億円以上、84年完成の普代水門は35億円。釜石港の湾口防波堤は1200億円だった。麻生渡・前福岡県知事は「1000年に1度のことを想定して災害対策はできない。ハードより、避難訓練などのソフト対応が重要なのではないか」と話す。実際、訓練などソフト対応が充実していた自治体は被害が少なかったとされる。
 極端気象についても限界を指摘する声がある。国土交通省の審議会では、「激化する災害を完全に防ぐのは難しい」として、河川の氾濫をすべて阻止するという従来の考え方からの転換が議論された。米国でも、東部では19世紀末以来の規模というM5.8の地震が8月に起きたことから、専門家が低頻度の地震でも対策を強化するよう求めている。
 災害に対する備えをより強固にする「投資」をすることで、将来の災害による損失を低減する道を探る方が財政面でも望ましいという意見もある。石橋克彦・神戸大名誉教授は「経済効率に合わせるのではなく、国土の自然条件を認識し、それに適合した社会作りを進める必要がある」と説く。

■【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編 2危険地域 利用か制限か @読売新聞(2011.12.17)
 危ない場所と分かっていても、古里への執着を断ち切れない。2005年にハリケーン「カトリーナ」が襲った米ルイジアナ州ニューオーリンズ。州が06年、家屋再建か州内外への移転に補助金を出す方針を示すと、88%の住民は移転に背を向けた。高床化の動きが加速したのは、州の補助3万ドルに加え、09年に連邦緊急事態管理庁(FEMA)が最高10万ドルの追加補助を始めてからだ。高床化は「1000年に1度」の洪水を想定したFEMA基準で決まり、海岸沿いでは2メートル以上の家屋も多い。約1万5000世帯分の費用は約15億ドルに上るが、地元経済を刺激し、州は「将来、40億ドルの損害を免れる試算」という。
 日本では行政が示した復興計画案に住民が反発していた。宮城県石巻市雄勝地区。市が、高台移転は約2年で済むのに、かさ上げは10年以上かかる上、液状化の心配があると説明しても、住民は納得できない。仙台市でも津波の被災地を災害危険区域に指定したが、新築はできなくても、壊れた家を修理して住むことは止められない。1991年に雲仙普賢岳の火砕流で多くの犠牲を出した長崎県島原市。当時、住民の立ち入りを禁ずる警戒区域を全国で初めて住宅密集地に設定したが、指定が徐々に解除されると、人々は古里に戻り始めた。
 複数の県庁に出向した中央官僚は「自然災害の恐れで区域指定しようとしても住民が反対し、自治体も踏み切れない事例を何度も見た」と打ち明ける。森地茂・政策研究大学院大学特別教授は「今回の震災の反省はバザードマップが正確でなかったこと。行政が『危険』と指定すると、土地の値段が下がり、財産権の侵害だと言われることが影響した時もある」と指摘する。危険に目をつぶり、住み続けるか。それとも、命を守るための私権制限を考えるのか。国民全体に突きつけられた問いだ。

■【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編 3代替交通網で孤立防ぐ @読売新聞(2011.12.19)
 遠野市は三陸沿岸と内陸を結ぶ扇の要にあたり、放射状に国道が延びる。沿岸の陸前高田市や大船渡市、釜石市まで車で1時間だ。この地の利を生かそうと、遠野市の本田敏秋市長は2007年に後方支援拠点構想を打ち出し、津波災害に備えてきた。本田市長は「人口減少時代に入り、市町村は補完し合うような連携が重要だ。道路網が果たす役割は大きい」と説く。
 国土交通省東北地方整備局は震災後、内陸の国道4号と沿岸部を東西に結ぶ救援ルートを切り開く「くしの歯」作戦を展開した。対象ルートの復旧を最優先させた結果、4日後には15ルートで緊急車両を通すことができた。
 こうした目で日本列島を見ると、道路整備の遅れが目立つのが、東海・東南海・南海の三連動地震で津波被害が想定される高知県など四国南部の沿岸地域だ。沿岸の国道が寸断されれば代替路がなく、約20万人が孤立する恐れがある。小泉政権以降の公共事業削減の流れは、効率ばかりを優先し、リダンダンシー(代替性・補完性)の発想が乏しかった。家田仁・東大教授(社会基盤学)は「道路整備には交通量の多さだけでなく、災害時に地域を孤立させない視点も欠かせない」と指摘する。

■【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編 4工場集約から分散へ @読売新聞(2011.12.21)
 東日本大震災やタイの大洪水は、多くの企業で深刻な生産の停滞を招いた。極限まで効率化しようと工場などを集約してきた日本の産業界の思わぬもろさを浮き彫りにした。モノ作りが国を支える日本にとって、災害に強い産業分散の成否は国の将来を左右するといっても過言ではない。
 産業用計測器メーカーの東京計装(東京都港区)は、沖縄県うるま市に主力の流量計の生産を横浜から一部移した。震災後の計画停電で生産計画が立てられず「供給責任を果たすには拠点を分散化する必要がある」と痛感した。浜松市に生産拠点が集中する自動車大手スズキは、東海地震に備えて開発・生産拠点の再配置を決めた。曙ブレーキ工業はドラムブレーキ摩擦材の生産の一部を福島県から山形県に移した。シャツ生産大手の山喜(やまき)は、福島県で手がけるオーダーメード商品を、緊急時には長崎県の既製品工場でも作れる体制を取った。
 野村総合研究所の調査では、震災で企業の重要業務が滞った理由として「業務に必要な生産拠点が利用できなかった」が45%に上った。

■【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編 5ガス・水道複線化で差 @読売新聞(2011.12.23)
 3月11日。仙台市宮城野区にある市ガス局の「港工場」を7メートルを超す津波が襲った。7市町村、約36万戸へのガス供給はストップしたが、4月16日には沿岸部などを除く約31万戸への供給にこぎ着けた。約86万戸の復旧に約3か月かかった阪神大震災と比べて迅速さが際立つ。
 ポリエチレン管の導入など地震対策が役立った。復旧作業には全国の49ガス事業者延べ約7万5000人が集結。さらに、日本海側からの天然ガスのパイプラインの存在が大きかった。液化天然ガス(LNG)からのガス製造施設が使用不能となる中、パイプラインに被害はなく、安定供給できた。同局は「供給ラインの複線化などネットワーク構築の重要性を痛感した」と振り返る。
 一方、水道では、宮城県内17市町に水道用水を供給する県企業局の「仙南・仙塩広域水道」が供給停止。広域水道は複線化されておらず、通水ルートの切り替えはできなかった。
 電力は一般的に送電系統の切り替えが容易で、ガスや水道に比べて復旧は早い。通信も沿岸部では、基地局が被災した携帯電話網が壊滅した。通信関連は商用電源に頼るものが多く、停電が機能停止につながることもある。ライフラインの維持や早期復旧では、供給源や供給ルートの多重化がカギとなる。

■【列島再生】 第1部災害に強い国土・前編 6派遣医療団 連携に課題 @読売新聞(2011.12.24)
 「透析患者は運べません。基準外ですから」。石巻赤十字病院(宮城県)の石井医師は返ってきた言葉に耳を疑った。震災から3日後、入院患者約30人を内陸部の安全な病院に運んでもらおうと、仙台市のDMAT(災害派遣医療チーム)本部に助けを求めた時のことだ。結局、要請は断られた。
 阪神大震災の反省から生まれたDMATの役割は、重傷者の救助や搬送。孤立した病院からの慢性患者の搬送は想定外。DMATが直面した課題はこればかりではない。「重篤患者を乗せたヘリコプターが目的地に着いたが、他のヘリと鉢合わせして着陸できなかった」「到着したら患者は自衛隊機で運ばれた後だった」「着いてみたら病院ではなく遺体安置所だった」。事前に指揮命令系統を定めていなかったことや、自衛隊や消防などで作るヘリの連絡調整組織に参加しなかったことから混乱が続いた。
 ハード、ソフト両面で救急医療体制の充実が不可欠だ。災害拠点病院(全国約600)は、都道府県と複数市町村にまたがる「2次医療圏」(同349)で一つずつ置くはずが、2次医療圏で「空白地帯」が残る。指定済みの病院でも耐震化対応は6割程度。今回の震災後、空白地帯解消や耐震化の動きが加速した。ソフト面を見ると、震災前の調査では、災害拠点病院の4割以上が、年1回以上の搬送訓練を「していない」と回答。岐阜県総合医療センターでは今年8月、初めて周辺病院と合同で搬送訓練を実施した。「現場の混乱を見て初めて、搬送には準備と連携が必要だと気付いた」と被災地で活動した医師は言う。震災の経験は関係者の意識を変えつつある。
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