東日本大震災復興計画情報ポータルサイト(特設サイト)

【経済教室】大災害の経済学を考える 大竹文雄 大阪大教授...

■題 名 【経済教室】大災害の経済学を考える 大竹文雄 大阪大教授
■日 付 1899年12月31日 ■大分類 新聞等(日経)
■概要 . 東日本大震災は今後の日本経済に大きな爪痕を残すことが予想される。厳しく困難な道が予想されるが、被災者の生活再建を第一に考えながら、新たな日本の国づくりを進める必要がある。

(ポイント)
・大災害、資産が少ない層への影響より深刻
・研究でも「短期的な成長鈍化避けられず」
・復興計画策定、若手が主導し長期的視野で

 経済的な側面からみた大災害の問題の一つは、一時的に大きく人々の生活水準を低下させてしまうことだ。米ハーバード大学の研究では、大災害時に生活水準が急激に下がるのを避けるためなら、人々は普段の生活水準が今より約20%低下してもよいと考えるとの結果を示した。逆にいえば、大災害が発生した場合の経済的ショックは毎年所得の20%の保険料を支払う価値があるほど大きい。

 私たちは、所得に対する様々なショックに直面した際、借り入れたり貯金を取り崩すなどして、生活水準が大幅に下落しないようにしている。だが、ある地域全体を襲う大災害では、たいていそうしたメカニズムが十分機能しない。
 阪神大震災の被災地の家計は、他の地域の家計に比べ所得減少により大きく反応して消費を減らしていることが明らかとなった。また、震災前の時点で担保価値のある資産をもっていた人たちは、震災後入れができたため、生活水準を落とさなくて済んでいたが、震災前の時点で、借り入れが困難な状態にあった人たちは、震災によって生活水準の低下に直面した。
 阪神大震災よりも広範囲に甚大な被害を与えた東日本大震災では、多額の義援金が集まったとしても、人々の生活水準を維持する水準には程遠いだろう。特に、新たな借り入れが困難な人たちにより大きな打撃があるという点を十分に理解した上で、救援、復興対策を進めることが必要だ。

 三陸海岸の水産業や農業の復旧を急ぐのは当然であるが、もともと生産性が低かった産業や企業をそのまま復旧しても、経済成長を高めたり、若者が集まってきたりすることにはならない。復興計画で地域の特性をいかすには、方向性を決める際、長期の視点を取り入れることを必要条件としていくべきだろう。
 復興政策に携わる人は、例えば30歳代や40歳代に限定し、50歳以上の人々は知識や資金の面で彼らを応援することに徹するといった工夫も必要だ。年齢で制限するのは、被災地域の多くは高齢化率が高く、単純に政治的なプロセスで復興計画を策定すると、短期的な視野の復興計画が作られる可能性が高いからだ。既得権を中心とした復興計画であれば、災害後の経済成長は期待できない。私たちは、再分配政策と効率性の達成をどのように分離し、人々の働く生きがいを回復させるかという困難な問題に正面から向き合わなければならないのである。
■タグ 日経 経済教室 コラム 大竹文雄 災害 生活水準 復興対策 水産業 農業 既得権 経済成長 再分配政策 効率性
■関連URL
■添付ファイル
■管理番号 No.00030


PAGETOP
| お問合せ・所在地 | サイトマップ | 電子パンフレット | リンク・著作権 | 個人情報保護方針 |