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【検証大震災】 1年余 進まぬ住宅再建 岩手県野田村 移転計画は先行したが 進んだのは机上...

■題 名 【検証大震災】 1年余 進まぬ住宅再建 岩手県野田村 移転計画は先行したが 進んだのは机上の事務ばかり
■日 付 1899年12月31日 ■大分類 新聞等(毎日)
■概要 . 震災から1年2カ月がたっても被災地では住宅再建が進まない。高台移転計画が先行していると言われる岩手県野田村でさえ「先が見えない」という住民が多い。復興の現場で何か起きているのか。
(村長案「命のライン」)
 津波は12メートルの防潮堤を壊し、第2堤防と呼ばれる盛土した国道45号を越えた。「命のライン」。第3堤防計画は誰からともなくそう名付けられた。小田村長は津波対策を検討する県の委員会の委員長に、国や県の復興シナリオにはない第3堤防の建設を早々と提案した。だが、津波を最初に食い止める防潮堤の高さを県が確定しなければ、浸水区域を想定して第3堤防の場所を定められず、被災者がどこに自宅を再建できるか決められない。
(決まらぬ予算 消えた「高台」)
 7月9日、冶岸首長との意見交換に訪れた平野達男復興担当相に、小田村長は国の素早い対応を求めた。村職員は集団移転を想定し、民有地を買い上げるために地権者を回っていた。村有地の移転候補地には保安林がある。伐採するには県の指定解除が前提だが、その申請には造成面積を確定しなければならず、手続きに半年はかかる。さらに埋蔵文化財の発掘も必要で、移転候補地と考えていた場所を断念せざるを得ないこともあった。
 野田村が移転用地の確保に難渋していたころ、国の復興構想会議で1つのアイデアが注目されていた。沿岸部をコンクリートでかさ上げして人工高台を造る案だ。「いくらなんでもコストがかかりすぎる」。国庫負担による高台移転の必要性を認識していた財務省幹部でさえ危機感を抱いた。復興の動きは財源論議の紛糾に加え、「菅おろし」をめぐる民主党内の混乱でいっそう鈍る。
 6月25日、復興構想会議の提言がまとまる。高台移転や多重防御など、まちづくりのモデルケースを示したものの、7月29日に政府が決定した基本方針からは「高台移転」の文字が消えていた。構想会議の委員の一人は「政府は逃げたのか」といぶかしんだ。
 集団移転の負担を含む震災復興交付金を盛り込んだ第1次補正予算の成立は、野田政権発足から2カ月半後の11月まで待たねばならなかった。
(住民二分 うちはどっち)
 9月26日、県はようやく野田村の防潮堤の高さを決めた。第3堤防(命のライン)の場所もやっと確定できる。しかし、国費での建設は防潮堤にしか認められていない。村長の指示を受けた職員は、公園として整備すれば国の復興交付金の対象になることに気づいた。
 11月7日、野田村は復興計画を策定。第3堤防より海側は建築制限をかけ、住民は防災集団移転促進事業で高台に集団移転する。一方、陸側は「土地区画整理事業」で避難路を整備した上で、住民は原則自主再建し、集団移転の対象から外れる。
 27日、住民説明会は約200人が詰めかけた。地図を開くと、旭町を中央から分断するように第3堤防の線が引かれていた。。2度目の説明会は12月10日。配られた資料が人によって違った。地図は第3堤防をはさんで集団移転区域がグリーン、区画整理区域はピンクに色分けされていた。グリーンの区域は被災した土地を買い上げてもらえる。ピンクの区域は買い上げの対象外で、高台に移りたけれぱ災害公営住宅に入る。旭町の自治会長は村長の苦悩を思った。全員が満足できる方法はないと分かっている。しかし「小さな村だからこそ、再建を巡って差が出れば、村民の気持ちがぱらぱらになってしまう」と不安がよざった。
(造成さえ未着工)
 2月25日の住民説明会。岩手県が沿岸12市町村で実施した不動産鑑定よる土地買い取りの標準価格が初めて示された。建築制限区域は震災前より1〜2割下落していたが、鑑定は村内6カ所の抽出地点だけ。あくまで目安に過ぎない。村独自で細かな調査をしたくても財源がなく、国の復興交付金の配分を持つしかなかった。
 いつになれば仮設住宅を出られるのか。小田村長は津波で一命をとりとめた高齢者たちが「助からねえ方がなんぽ楽だったか」と嘆くのを耳にするようになった。
 震災発生から11カ月たった2月、政府は復興庁を発足させた。人手不足にあえぐ被災自治体に各省庁が本格的な職員の派遣を始めたのも4月になってからだ。海側は今なお更地ばかりが広がり、集団移転で住宅ができるはずの山は造成さえ始まっていない。進んだのは紙の事務作業だけだ。
■タグ 毎日 野田村 集団移転 防災集団移転促進事業 高台移転
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