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【経済論壇から】 「復興プラン」論議が本格化 効率偏重落とし穴も...
■題 名 | 【経済論壇から】 「復興プラン」論議が本格化 効率偏重落とし穴も | ||
■日 付 | 1899年12月31日 | ■大分類 | 新聞等(日経) |
■概要 | 東日本大震災から2か月あまり。復興に向けた議論は少しずつ活発になり、論壇でも復興に向けた様々な問題提起や政策提言が競い合うように提案されはじめた。 ◇経済という観点から被災地を金融面でどのようにサポートするかが何といっても重要だ。名古屋大学教授の家森信善氏(週刊東洋経済4月23日号)は、損失負担の方法次第では二次損失が広がり、新たな金融システム不安が生じかねないと指摘。地方では地元企業との接点は地域の金融機関が持っており、そのノウハウを活用するためにも、地域の金融機関へのより一層の資本支援が不可欠だと訴えている。 ◇「二箪ローン」も深刻な問題だ。しかし、東京大学教授の伊藤隆敏氏(週刊エコノミスト5月17日号)が指摘するように、いかに危機的な状況のもとでも一定の規律に則って金融取引が行われないと、震災と関係のない不良債権が紛れ込むモラルハザードが蔓延し、経済システムは破綻してしまいかねない。 関東大震災後の震災手形の乱発がその後の昭和金融恐慌につながったように、被災者の債務免除を民間金融機関や日銀に引き受けさせることは、かえって金融システムを不安定にするだけだと伊藤氏は論じている。 ◇秋以降は大震災で寸断されたサプライチェーンや電力不足といった供給制約が徐々に解消し、復興需要が日本経済を押し上げていくという見方が有力だが、クレディースイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏(週刊エコノミスト5月24日号)によれば、日本リスクの再認識が「日本離れ」という形で潜在成長率の下方屈折を生み出す可能性も捨てきれないという。 日本企業の海外移転や海外部品調達比率の引き上げは、産業の空洞化を促し、国内雇用の悪化は消費を低迷させるだけでなく、優秀な技術者の海外への流出を加速しかねない。市場がこのような動きに注目し、先走り的な行動をとれば、年度後半の国内景気に冷水を浴びせかねないというのが白川氏の分析だ。 ◇こうした日本離れを起こさせないためには、復興の質も問われることになる。前向きの復興は従来の非効率な制度や仕組みを改め、低迷が続く日本経済の潜在成長率を大きく高める機会ともなる。 そのヒントとなるのが電力供給の在り方を巡る最近の経済学者の議論だ。東京大学教授の松村敏弘氏(日経ヴェリタス5月15日号)は、電力会社による送配電網の地域独占には構造的な欠陥があり、これまでの高い託送コストが効率的な電気の売買を阻んできたと王張。大型の発電所を遠方に立地して、消費地に電気を運ぶ現在の送配電網を抜本的に見直すよう求めている。 ◇被災地の新たな町づくりも復興の大きな課題である。同志社大学教授の橘木俊詔氏(週刊東洋経済5月14日号)が述べているように、東北地方は日本で失われつつある血縁、地縁、社縁が依然として残っている数少ない社会だった。惨禍を目の当たりにしながらも、悲しみを押し殺しながら互いに助け合う被災者の姿や、地域コミュニティの底力に大きな感銘を受けたのは、評者だけではあるまい。 ◇厳しく緩みのない市場競争の原理は、組織と人を鍛える上で重要で、それを無視した復興があり得ないのは確かだが、流通科学大学学長の石井淳蔵氏(プレジデント5月16日号)が論じているように、競争原理だけが一方的に強くなると、仲間意識を軸とした中間的組織は軽視されてしまう傾向がある。そうなると、しなやかさが失われ、かえって危機に弱い組織となってしまいかねない。市場競争を軽視してはいけないが、復興は物理的な効率性を追求する経済学者の実験場であってもならない。 |
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■タグ | 日経 経済論壇 コラム 家森信善 金融機関 伊藤隆敏 二重ローン モラルハザード 白川浩道 日本離れ 松村敏弘 送配電網 橘木俊詔 地域コミュニティー 石井淳蔵 競争原理 仲間意識 | ||
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