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【地域再生震災が問う】連載1〜5 土地利用制限も選択肢/原発、自治体にあつれき/広域連携国...
■題 名 | 【地域再生震災が問う】連載1〜5 土地利用制限も選択肢/原発、自治体にあつれき/広域連携国頼りでなく/防災、近所付き合いから/自治体離散住民守れるか | ||
■日 付 | 1899年12月31日 | ■大分類 | 新聞等(日経) |
■概要 | . 東日本大震災は地域が抱える課題を浮き彫りにした。災害に強い街づくりやエネルギー問題について議論が活発化。コミュニティーや自治体連携のあり方を見直す動きも出てきた。大震災を教訓に地域をどう再生するか。全国各地の取り組みを追う。 ■【地域再生震災が問う】 見えてきた課題1 土地利用制限も選択肢 @日経新聞(2011.7.26) 高知県黒潮町。合併に伴い、老朽化した町役場の移転計画が進められていたが、今年6月の町議会で質問が相次いだ。南海地震の発生時に津波に遭う恐れがあるからだ。移転先は太平洋岸から600メートル、海抜4メートルの現庁舎のすぐ隣。かつては約2キロメートル先の高台への移転も検討したが、「住民の利便性や街のにぎわいを考えて近くに決めた」(同町総務課)。しかし東日本大震災の津波被害を目の当たりにして、住民や町議らの反応は一変した。大西勝也町長は「ゼロベースで再検討する」との答弁を余儀なくされた。町が財源に見込む合併特例債は2015年度が期限。計画続行か見直しか、町は決断を迫られている。 地震や台風、大雨などで生じる危険が分かっていても十分な対策を進められない自治体は多い。例えば大阪府。急傾斜地に5戸以上の民家が立つ土砂災害の危険箇所が府内に約900ヵ所あるが、崩落を防ぐエ事の整備率は11年度末見通しで25%にとどまる。長期・広域的に土地利用を制限することも選択肢で、名古屋市はその先例だ。名古屋港周辺の臨海部約6500ヘクタールの面積に、木造住宅の建築を完全に禁止した区域や、木造住宅を建てる場合でも寝室やリビングなど人が普段いる部屋を2階より上の階に置くことを定めた区域を設けた。大地震を想定した土地利用制限の例は米カリフォルニア州にある。断層の地表上ではビルや住宅の新築や増改築を認めないことなどを定めた断層ゾーン法だ。 東大生産技術研究所の大原美保准教授の推計では、断層ゾーン法を日本に当てはめると、断層近くに住む人口は約289万人、木造建物数は約62万棟に上る。大原准教授は「日本はこれから人口減少が加速し、災害復旧に充てる国の財源や経済力が低下する恐れがある」とし、「人々により安全性の高い場所で居住するよう誘導していくことが重要になる」と提言する。 ■【地域再生震災が問う】 見えてきた課題2 原発、自治体にあつれき 自然エネ、恩恵なお見通せず @日経新聞(2011.7.27) 度発を巡って敦賀市の河瀬一治市長と大阪府の橋下徹知事の間で論争が起こった。原発立地に伴うリスクを抱える地域が原発推進を唱え、電力を他県に依存する都市が「脱原発」を主張する。このねじれた関係が日本の都市と地方の姿だ。 ソフトバンクの孫正義社長の呼びかけで7月13日に発足した「自然エネルギー協議会」。全国35道府県が参加。メガソーラー(大規模太陽光発電所)の誘徴競争が始まった。これらの35道府県と一線を画するのが東京都だ。「太陽光だけで電力をまかなえるはずがない」と協議会への参加を断った石原慎太郎知事は、東京湾岸部に天然ガス火力発電所を建設する構想を打ち上げた。 岩手県葛巻町。同町の有識者委員会は5月、地域の資源を生かせば町の世帯数の300倍以上の電力を生み出せるという報告書をまとめた。内実は様々な課題を抱えている。町の第三セクターが運営する風力発電所の売電価格は1キロワットあたり10円。「建設費を補助心てもらい、15年間発電してようやく収支が均衡する」(農林環境エネルギー課)のが現状だ。運転中の15基の風力発電が生み出す雇用は監視業務などに従事する数人にすぎない。再生可能エネルギーが地域経済にもたらす恩恵はまだ大きくない。 ■【地域再生震災が問う】 見えてきた課題3 広域連携国頼りでなく 自治体の機動力生かせ @日経新聞(2011.7.28) 今回、被災地の支援でいち早く動いたのは市区町村だった。姉妹都市や災害時応援協定などの関係が生きた。震災で勢いづいた広域連携。だが課題もある。 1つは法制度問題で、災害救助法は被災地支援を都道府県の役割としている点だ。市区町村が独自に支援した場合、県を通じて手続きしないと国の補助が出ない。 2つ目は住民との対話や説明の徹底だ。今回の震災では膨大ながれき処理の問題が生じた。環境省によると42都道府県の572市町村・一部事務組合が受け入れを表明した。しかし「放射性物質は大丈夫か」と川崎市や京都市が住民らの反発を受けたこともあり、受け入れに尻込みする自治体が少なくない。 3つ目は財源だ。被災者に住宅再建資金を300万円まで支給する被災者生活再建支援制度。原資は都道府県が積み立てた基金と国の負担金だ。政府は震災で必要な支給額を4400億円と算定。国の負担を従来の5割から8割に引き上げた。全国知事会の要望で国がその分、地方交付税でまかなうことになったためだ。困ったときに助け合う自治体主導のこの制度でさえ、肝心の財源はまだ国に頼っているのが現実だ。 未曽有の災害は、日本人に「共助」の精神を再認識させ、自治体を広域連携へと突き動かした。だが、次の災害への備えは十分とはいえない。 ■【地域再生震災が問う】 見えてきた課題4 防災、近所付き合いから 「縁側」の交流で信頼構築 @日経新聞(2011.7.29) 「たびたび発する警報に住民は『慣れ』があったのかもしれない」。和歌山県田辺市の宮脇寛和・防災対策室長は3月11日を振り返る。東日本大震災では同市も大津波警報が発令された。約2万人に避難指示を出したが、実際に避難したのは3%の600人あまりにすぎなかった。同市で住民の避難意識が高かったのは新庄町地区だ。住民同士が声を掛け合い、手を取り合って標高20メートルの避難所に登った。津波対策委員長の小阪英二さんは「皆知り合いだから、避難時に誰の手助けが必要か分かる」と話す。 若い世帯や独り暮らしの多い都会では住民同士の助け合いに期待するのは難しい。東京都足立区はこの課題に挑戦するため「地域のちから推進部」を4月に新設。町内会や非営利組織(NPO)など連携を促す。埼玉県坂戸市に全国から視察者が絶えない自主防災組織がある。舞鶴自治会がつくる防災委員会。緊急時に支援が必要な人々にそれぞれ支援する担当者を決めている。民生委員と住民を戸別訪問し、支援が必要な人と支援者の間に入り双方の意思を確認する根気のいる作業を毎年続けている。 法政大学の名和田是彦教授は「すぐに顔の見える関係を築くことはできない。まず知らない人々でも自然に参加できる雰囲気づくりが欠かせない」という。そんな人と人とのつながりを築く空間づくりが長野市で広がっている。伝統的な日本家屋の縁側のよう に、住民が気軽に立ち寄って交流できる場を「まちの縁側」に認定するプロジェクトだ。商店にベンチを置いたり、自宅の一室で定期的に集会を開いたりと、場所や形態は様々だ。プロジェクトの代表を務める長野県高齢者生活協同組合(長野市)の新井厚美事務局長は「お茶飲み場での会話をきっかけに周りの人が何に困つているか分かれば、助け合いをしやすくなる」と話す。 ■【地域再生震災が問う】 見えてきた課題5 自治体離散住民守れるか 後ろ盾急務、合併も探る @日経新聞(2011.7.30) 「時間の経過とともに、ふるさとへのこだわりが薄れていくのではないかと心配です」。福島県浪江町は広報誌の発行を今月再開し、特定非営利活動法人などの力を借りて全国に離散した町民の声を「浪江のこころ通信」として載せ始めた福島県全体の県外避難数は4万6295人(7月14日時点)。遠い九州地方でも1278人が避難暮らしをする。 国会では原発事故による避難者を支援する特例法案が審議入りした。避難先に住民票を移さなくても行政サービスを受けられる「二重市民権」を実質的に認めるほか、転出者にも出身自治体の行事に参加する機会を与える内容だ。 ふるさと離散の先例は東京都三宅村だ。2000年の三宅島噴火で全島民が避難したが、4年半後に7割の人が島に戻った。三宅村では財政力のある東京都が人的、財政的な後ろ盾となったが、未曽有の災害の今回は十分な支援を得られるかが被災自治体の課題だ。浪江町の現状は厳しい。 災害対策基本法は一義的に防災を市町村の役割とする。だが、東日本大震災は小規模な市町村が大災害に対応しきれない現実を浮き彫りにした。より大きな安心のためには合併という選択肢が浮かぶ。震災では合併市町村に明暗があった。4市町村が合併した岩手県宮古市。沿岸部の旧田老町などが津波に襲われ、内陸部にある旧新里村の施設が支援拠点となった。山本正徳市長は「合併していなければ内陸部を活用した対応は難しかった」と話す。一方、7市町が合併した宮城県石巻市。総合支所の人員が減り、道路整備も遅れていたため沿岸部が孤立した。合併市町村はかつて役場だった総合支所が機能するかがカギを握る。5市町が合併した山口県下関市は総合支所の機能強化のため耐震建築に建て直す。本庁が判断していた避難勧告も現場の状況を把握しやすい総合支所が実質的に出せるようにした。 自治体は住民を守れるのか--震災は市町村のあり方を問いかけている。 |
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