国土に関する常識クイズ |
<総合目次> |
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日本の国土 |
国土の大きさ |
海と日本 |
雨や雪 |
日本の人口 |
日本の都市 |
山や森林 |
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短くて急な川 |
自然災害の被害 |
水害や土砂災害 |
台風の進路 日本 |
地震国 日本 |
火山国 日本 |
低地に広がる日本の都市
日本の国土の面積は約37万8000平方kmですが、この国土の全てが人の住める地域ではありません。日本の国土は山が多いので、海沿いに開けた平野や山に囲まれた盆地など限られたところにしか街を築くことができません。日本の都市はどんなところにあるのでしょうか。また、日本の都市は、東アジアのなかでどのような位置にあるのでしょうか。
■外国と比べて住める土地が少ない日本
人が住むことができる土地のことを「可住地」と言います。もともと人が住んでいる街のほかに、畑、水田、草地など開発することで人が住めるようになる土地も「可住地」です。山地や森林、湖沼など人が住むのに不向きな土地は「可住地」とは言いません。
それでは、日本の国土のどれくらいが可住地でしょうか。日本は山が多い国ですが、1億2800万人の人が住んでいるのだから。きっと可住地もたくさんあるにちがいないと思うかもしれません。日本の可住地の割合は国土のおよそ30%です。図を見てわかるように、日本は山地が多いので平野や盆地などに可住地が見られます。
では外国はどうでしょうか。イギリスの国土の面積は日本の3分の2で、本州よりも少し大きいくらいなのですが、可住地は日本の2倍あります。ドイツの国土の面積は日本よりも少し小さいくらいですが、可住地は日本の2倍以上あります。
そのなかで、日本の人口は約1億2800万人、イギリス約6100万人、ドイツ約8200万人ですから、日本はイギリス、ドイツと比べて半分しかない可住地に多くの国民が住んでいることがわかります。
■国民の80%が標高0〜100mの地域に住んでいる
少し古い調査結果ですが、1995年(平成7年)の
さらに標高が1m未満の低地は国土面積の0.5%ほどですが、こうした地域に298万人が住んでいます。これは
■川の水面よりも低い東京や大阪
東京、大阪の地形と川の水面の高さについて、外国の都市と比べてみましょう。
東京では、隅田川、荒川、江戸川の間にある街が標高0mになっていて、さらに川の水面よりも低いことが分かります。大阪も寝屋川の近くでは淀川の水面よりも低くなっています。
それに対して、イギリスの首都ロンドン、フランスの首都パリ、アメリカの大都市ニューヨークでは、川よりも高いところに都市が広がっています。
■東京湾・伊勢湾・大阪湾の沿岸に広がる海抜ゼロメートル地帯
東京湾・伊勢湾・大阪湾のまわりには、東京都、横浜市、川崎市、千葉市、名古屋市、大阪市、神戸市など大都市があって、多くの人が住んで働いている、日本のなかでも重要な地域です。
しかし、東京湾・伊勢湾・大阪湾のまわりには海面よりも低い地域が広がっていて、多くの人が住んでいます。地図で赤い地域が海抜ゼロメートルよりも低い地域です。また、地図でピンクの地域は海抜ゼロメートル以上であっても海が満潮になると海面よりも低くなる地域です。
この赤色とピンク色の地域の面積は合計は577平方km、住んでいる人口は合計で404万人にもなります。
もし、街を守っている堤防が地震でこわされたり、台風などの高い波によってこわされたりして街に海水が浸入してくると大変な被害となります。しかも、川の洪水は時間がたてば下流の方へ水が引いていきますが、海抜ゼロメートルでこわいのは海面と同じ高さになるまで水が浸入し続けることです。
海抜ゼロメートル地帯を洪水や高潮などから守るために、堤防や水門を強くしたり、堤防を1つだけでなく二重につくるといった方法のほか、もし堤防がこわされたり、水が堤防をこえてきたときのことも考えて、避難する道路や安全な高い場所をつくっておき、住んでいる人たちが知っておくようにすることも大切です。
■川沿いの低地と台地に発展した東京、濃尾平野、大阪平野
東京、名古屋、大阪はどんな地形のところに発展した街か見てみましょう。
●東京 JRの線路をさかいに、東半分は川沿いの低地、西半分は台地の上に発展
上野や東京、浜松町、品川を通る京浜東北線の線路をさかいに、東半分は水色で示されたように川沿いの低地で、西半分は黄色で示されたように台地の地形です。
昔、江戸城だった皇居は、ちょうど台地と低地のさかいにあります。台地には川がつくった谷が何本か見えます。「武蔵野台地」と呼ばれるこの台地には、池袋や新宿などの大きな駅のある街が栄えています。渋谷もまた大きな駅のある街ですが、「谷」という字が地名についているとおり、台地のなかを流れる川がつくった谷にできた街です。
浅草は隅田川のほとりにある歴史の古い街ですが、緑色で示されています。まわりに比べて高い土地の上にできた街だということがわかります。
東京の東側をバイパスするように流れる幅の広い荒川は、東京を洪水から守るために掘られた人工の川です。荒川はもともと隅田川を流れていました。1910年(明治43年)年に東京や埼玉で大水害が起こったのをきっかけに新しく人工の川を掘る計画が立てられました。1913年(大正2年)から1930年(昭和5年)まで17年かかって完成した大工事でした。
●名古屋 日本一面積の広い海抜ゼロメートル地帯が広がる濃尾平野
愛知県の西部と岐阜県の南部にかけて広がる濃尾平野は、木曽川、長良川、揖斐川という3本の大きな川が並んで流れることが特徴です。濃尾平野の地形は東側が高く、西に向かって低くなっています。このため、平野の西に見える「養老山地」にぶつかるように川の流れが集まってしまうのです。この3本の川は、昔から洪水を起こし、この地域に住む人々を苦しめてきました。「輪中」という堤防で囲んだ集落で有名です。
名古屋市と3本の川との間には、日本一面積の広い海抜ゼロメートル地帯が広がっています。1959年(昭和34年)の伊勢湾台風では、愛知県・三重県・岐阜県合計で死者・行方不明者5098人という被害を出しました。被害を大きくした原因は高潮です。この海抜ゼロメートル地帯は埋め立て地が住宅地になったり、地下水のくみ上げで地盤沈下していました。伊勢湾の地形と台風の風向きなどの条件が重なり、海水が陸地に吹き寄せられて海面が3.89m上昇しました。堤防の高さが3.38mしかなかったので、堤防を乗りこえ、また、波が堤防をこわして海水が海抜ゼロメートル地帯に押し寄せました。
名古屋市を見ると、名古屋城や熱田神宮は台地と低地の境目に位置していることがわかります。昔の人は、自然の地形のよいところに、神社や城をつくったことがよくわかります。
●低地に栄えた大阪
大阪は低地に栄えた街です。江戸時代には水運で栄えた商業都市です。
大阪平野は淀川などの川が土砂を運んでできた平野です。このため水色で示された標高の低い地域が広がっているのがわかります。上町台地という半島のように突き出た地形が特徴で、大阪城は上町台地の先端にあります。
青色で示される海抜ゼロメートル地帯が淀川の河口付近に広がっていて、台風が来たときには海水面が上昇する高潮の被害が心配されます。淀川は幅が広い大きな川ですが、川の両側にはしっかりと高い堤防が築かれていて、大阪平野を守っているのがよくわかります。
上町台地の東側は寝屋川などの小さな川が何本も流れていて、集中豪雨などがあったときに、こうした小さい川がはんらんして洪水が起こることが心配されます。もともとこの地域は、川の流れが上町台地にさえぎられた低い湿地帯だったところで、江戸時代までは多くの池があったそうです。
大阪の南には大和川が流れていますが、黄色で示された台地のなかを大和川だけがまっすぐ西に流れています。実は昔の大和川は上町台地の東側の湿地帯を流れていました。たびたび洪水を起こしては被害をおよぼすので、江戸時代の1704年にいまの流れにつけかえる工事が行われました。
■東アジアと日本の都市
地図を使って日本の都市と東アジアとの関係について見てみましょう。いろいろな都市を中心に円をかいてみました。
●東京を中心に見ると北海道、九州と韓国の首都ソウルはほぼ同じ
東京を中心に半径1000kmの円を見ると、北海道と九州が円周の線にかかることがわかります。そして韓国も日本に近い地域では半径1000kmの円の中に入ります。東京から韓国の首都ソウルまで、直線距離で約1150kmです。東京から飛行機で韓国に行くのは、九州に行くのと同じくらいの感じです。
●福岡を中心に見ると、東京よりも韓国の首都ソウルの方が近い 東京と中国の上海との中間にある
福岡を中心に半径500kmの円を見ると、大阪や韓国の首都ソウルがほぼ円周の線に近いところにあるのがわかります。福岡にとっては、日本の首都東京よりも韓国の首都ソウルの方が近いのです。
半径1000kmの円を見てみましょう。東京が円周のなかに入りますが、中国の商業都市・港町である上海も円周のなかに見えてきました。福岡から東京までは直線距離で約880km、上海までもまた約880kmと、福岡は東京と上海の中間にあるのです。
上海だけではありません。青島や大連など中国の大きな港町が1000kmの円周近くに集まってきます。福岡は、本当に韓国や中国に近いことがよく分かります。
●那覇は東シナ海と太平洋を結ぶ中心都市。東京、香港、フィリピンの首都マニラは半径1500kmの円周にある
那覇は東シナ海と太平洋を結ぶ中心都市です。那覇を中心に半径500kmの円を見てみましょう。九州の南端の鹿児島や台湾にも届きません。それほど、鹿児島県の奄美諸島や沖縄県の琉球諸島などからなる南西諸島は、島々が長く
那覇を中心に半径1500kmの円を見てみましょう。円周の近くにある都市は、東京、北朝鮮の首都平壌、中国の港町大連、中国内陸を代表する工業都市のひとつ武漢、イギリスの植民地時代から銀行や商業など中心都市で有名な香港、フィリピンの首都マニラなどの都市が並びます。中国のほか東南アジアに近いのが那覇の特徴です。
●ソウルは半径2000km以内に東アジアの重要都市をおさめてしまう
韓国の首都ソウルを中心に東アジアの都市を見てみます。
半径500km以内に朝鮮半島を全ておさめ、福岡も約550kmの位置です。半径1000km以内に中国の首都北京、南京、上海、日本では大阪、ロシアの港町ウラジオストクなどの重要な都市が入ります。半径2000kmまで伸ばすと、日本がすべて円内に入ります。中国内陸の歴史都市西安、工業都市重慶、ロシア沿海州地方の中心都市ハバロフスクもふくめて、東アジアの重要都市をおさめてしまいます。
ソウルの仁川国際空港は、日本の27空港と結ばれており、日本の地方都市からヨーロッパやアメリカに行くときには、日本の国際空港ではなく、ソウルの仁川国際空港でヨーロッパやアメリカ行きの飛行機に乗りかえる利用客が増えているそうです。
●上海は半径2000km以内に日本の重要な港町にとどく
上海を中心に半径1000kmの円をかくと首都北京や香港などの中国の重要な都市が円周の近くに並びます。2011年6月30日に中国版の新幹線が北京と上海との間で開業しました。1318kmを約5時間で結びます。
また、上海は世界一の貨物コンテナの量をあつかう巨大な港町です。日本の全ての港であつかう貨物コンテナの量を足しても上海港に負けるほどです。2010年に上海港があつかったコンテナ量は2905万TEUですが、日本一のコンテナ量である東京港は382万TEUとなっていて、上海港は東京港の7.6倍です。(TEUとは、20フィートの大きさのコンテナ貨物1個の単位です。)
日本の重要な港である東京港や大阪港、日本海側の港町は上海から半径2000kmの円内にあります。ヨーロッパやアメリカから日本の港が行き先のコンテナであっても、ほかの港が行き先のコンテナといっしょに大型船にのせて上海港までまとめて運び、上海港でコンテナを行き先別にわけて、中型や小型のコンテナ船に積みかえて日本の港に運ばれていることがあります。