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地震の多い国、日本
私たちは、日本で地震が起こるのは当たり前だと思っています。でも地震が起きない国もあります。
どれくらいの地震が日本で起こっているのでしょうか。私たちは、地震や津波が起こることに備えて、地震が起こらない国に住んでいる人と比べて、どんなことをしているのでしょうか。
地震や津波によって、どれくらいの被害を受けてきたのでしょうか。
起こって当たり前と思っている地震のことを考えてみましょう。
■日本付近でマグニチュード6の地震が全世界の20%も発生する
下の図は、2000〜2009年にかけて日本付近で発生した地震(マグニチュード5.0以上)を示しています。マグニチュード5.0の地震が全世界の10%、マグニチュード6.0以上の地震が全世界の20%が日本周辺で発生しています。
¶豆知識 − マグニチュードとは地震のエネルギーの単位
地震が起きたときに発表されるマグニチュードとは何でしょうか。マグニチュードとは、地震が出すエネルギーの大きさを示す単位です。アルファベットの「M」で表します。アメリカの地震学者チャールズ・リヒターが考案したので、専門家は「リヒター・マグニチュード」と言うことがあります。このほか、地震学では「モーメント・マグニチュード」、日本では「気象庁マグニチュード」など、計算方法によってマグニチュードの種類がいくつかありますが、小学生・中学生には難しいのでここではお話ししません。
マグニチュードが0.2大きくなるとエネルギーは約2倍、1大きくなるとエネルギーは約32倍、2大きくなると約1000倍になります。マグニチュード2.0とマグニチュード4.0とでは地震のエネルギーは2倍ではなく1000倍ちがうのです。
¶豆知識 − マグニチュードと震度
マグニチュードと震度の関係は、電球の明るさと部屋の明るさに似ています。
明るい電球は遠くまで照らすことができます。電球の真下では明るいですが真下から離れると少し暗くなります。暗い電球は遠くまで照らすことができません。でも、電球を近くまで寄せれば、真下ならば明るいです。
地震も同じです。マニグチュードが大きい地震は遠くまで伝わります。震源地に近いと強くゆれます。マニグチュードが小さい地震は遠くまで伝わりません。震源地に近くとも強くゆれません。しかし、地震が浅い地下で起きたならば、地面までの距離が近い分だけ地震は強くなります。
それでは、震度の数字によって、どれくらいの地震の強さがちがうのでしょうか。震度は、震度計という機械で測ります。震度計が地震のゆれを感知して、計算式をつかって震度の数字をもとめます。
「震度0」「震度1」「震度2」「震度3」「震度4」「震度5弱」「震度5強」「震度6弱」「震度6強」「震度7」の10段階があります。
■日本は、地球上で地震が起きやすい場所にある
地球は主に岩石でできていますが、地中深くにいくほど温度が高くなっているため、「マントル」という物質が地球の内部で対流しています。地球の表面近くでは、「プレート」という厚さ数10kmから100kmの板のようなかたまりになっていて、1年間に数cmという速さで移動しています。地球の表面には、こうしたプレートが大きく14〜15枚あり、マントルが地球内部で対流する動きに乗ってそれぞれの方向に移動しています。
プレートがぶつかる境目では、一方のプレートがもう一方のプレートの下に沈みこんだりしています。その結果、地面が盛り上がって高い山脈ができたり、沈みこむところが海だと、そこは深い「海溝」になります。
地震は、プレートどうしがぶつかる摩擦が原因で起こります。世界で地震が発生する場所は、プレートどうしがぶつかる地点のまわりです。
●日本は世界でもめずらしい4つものプレートが集まる地点にある
日本列島は「ユーラシアプレート」と「北米プレート」の上に乗っていますが、「太平洋プレート」が西向きに移動してきて「北米プレート」にぶつかり、「日本海溝」などで地下にもぐりこみます。また、「フィリピン海プレート」は北向きに移動してきてぶつかり、「南海トラフ」で地下にもぐりこみます。このプレートどうしの摩擦が原因で地震が起こります。
¶豆知識 − 日本列島もプレートの上に乗って動いている
プレートの上に乗っている日本列島も、プレートの動きにあわせて動いています、太平洋プレートとフィリピン海プレートは日本列島の太平洋側を西や北西方向に押し、ユーラシアプレートは日本列島の日本海側を東や南東方向に押しています。両方から押されて盛り上がってできたのが、日本列島の真ん中を背骨のようにつらぬいている山脈です。
¶豆知識 − 伊豆半島と本州がぶつかっている神縄断層
神縄断層は、神奈川県松田町・山北町から静岡県小山町にかけての断層です。伊豆半島と本州との間のプレートの境目の断層として有名です。静岡県小山町では、その伊豆半島と本州のぶつかった地点を実際に目で見ることができます。
小山町教育委員会が作成した説明の看板によると、 今から約1500 万年前、伊豆半島は今の小笠原諸島あたりにあった島でした。フィリピン海プレートの動きに乗って少しずつ北上して約100 万〜 50 万年前に本州とぶつかりました。伊豆半島は本州にぶつかっても北へ動きつづけ、そのために丹沢山地が盛り上げられたということです。
写真の断層の線から左側は本州で、右側が伊豆半島です。本州側は丹沢山地をつくっている凝灰岩という地層、伊豆半島側はれき層という石の地層です。
■プレートの境目で起こる地震と断層が動いて起こる地震
日本で起こる地震には、大きく、プレートの境目で起こる地震と断層が動いて起こる地震があります。
¶豆知識 − 震源・震源域・震央
地震は、地中で地層や岩盤が引っ張られたり押しつぶされたりするなど大きな力が加わり、耐えきれなくなったときに起こります。一番最初に耐えきれなくなって破壊が起こった地点を「震源」と言います。「震源」の真上にある地表が「震央」です。
震源から始まった地層や岩盤が割れるなどの破壊は震源のまわりにも広がります(「震源断層」と言います)。この破壊が広まった範囲が「震源域」です。地震は、震源域の全体から発生します。
■くり返し同じ場所で発生する地震
過去に地震が起きた記録を調べると、大きな地震は同じ場所でくり返し起こっていることがわかりました。
●東海・東南海・南海地震
フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下にもぐりこむ「南海トラフ」のまわりでは、地震があったことを伝える文献記録や地質調査などから、東海地震、東南海地震、南海地震が、およそ100から150年くらいの年月の間でくり返し発生していることが分かりました。
東海地震、東南海地震、南海地震はそれぞれがマグニチュード8になるような巨大地震で、強い地震のゆれのほか、津波も発生し、大きな被害を何度も出してきました。しかも、3つの地震は過去に連続して起こることがあったので、今後も、連続して起こるのではないかと心配されています。
●南関東の地震
東京を中心とする関東地方の南部では、200年から300年に1度、関東大地震(関東大震災)と同じようなマグニチュード8の巨大地震が起こっています。過去にはマグニチュード8の巨大地震は、1703年と1923年に発生しました。このため、あと100年くらいはマグニチュード8の巨大地震は起こらないと予想されます。
しかし、マグニチュード8の巨大地震がくる間に、マグニチュード7の直下型地震が何回か発生しています。関東地方の真下で起こると予想されているので、東京の真下でマグニチュード7の地震が発生することが心配されています。
■日本に活断層は約2000あると推定されている
地震の原因の1つに「活断層」があります。活断層では、過去に地震がくり返し発生しており、今後も地震が発生すると考えられています。
下の図は、日本の主な活断層です。日本には約2000の活断層があると推定されています。
1891年(明治24年)の濃尾地震、1948年(昭和23年)の福井地震、1955年(平成7年)の兵庫県南部地震(=阪神・淡路大震災)、2007年(平成19年)の新潟県中越沖地震などの大地震は、活断層が動いたことが原因です。例えば、兵庫県南部地震(=阪神・淡路大震災)の原因となった淡路島の「野島断層」は、断層を境に右横に0.9〜1.3mずれ、南東側が0.2〜0.5m盛り上がりしました。
国の地震調査研究推進本部では、主な活断層について、予想される地震の大きさや地震が起こる確率(何年以内に地震が起こる可能性)などを研究して、発表しています。
■世界でもマグニチュード8以上の巨大地震が起きている
地震は日本だけでなく、世界で起こっています。1900年以降に世界で発生した巨大地震上位10位をあげてみると、東日本大震災のあった日本、インドネシア、南アメリカのチリやエクアドル、北アメリカのアラスカ、ロシアのカムチャッカ半島など太平洋をぐるりと囲んでいるようです。
2011年(平成23年)3月11日に日本で起きた「東北地方太平洋沖地震」はマグニチュード9.0という日本の観測史上最大の地震でしたが、世界でも第4位になる超巨大地震でした。
■地震で、建物が倒れたり、火事が起きたり、津波などによって犠牲者がでる
地震が起こることで、建物が倒れたり、火事が起きたり、津波が海岸付近などにおしよせるといった被害を受けることがあります。このため、死者や行方不明者が出ることがあります。
「大震災」と呼ばれる大きな地震被害を見ると、なぜ犠牲者が多く出たのか特徴があります。
1923年(大正12年)に発生した関東大震災では、死因の87%が火事によるものです。発生時間が11時58分という昼食時間だったこともあり、火事が発生しました。能登半島付近に台風がいたため、関東地方では強い風がふいていたことも火事を大きくする原因になりました。
1995年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災では、死因の83%が建物が倒れて下敷きになったりけがをしたことでした。朝5時46分に発生したため、ほとんどの人はまだ寝ていました。寝ているところに、古い木造の住宅が倒れてきて体がつぶされたり、タンスなど家具が倒れてきて体にあたって大けがをするなどして亡くなる人が多くでました。コンクリートの建物でも倒れたり、ある階だけがつぶれたりしました。
2011年(平成23年)に発生した東日本大震災では、マグニチュード9という超巨大地震でしたが、地震によって建物がこわされるという被害は多くありませんでした。それだけ、日本の建物は地震に対して強く作れるだけの技術が発展したということです。
しかし、地震後に海岸をおそった津波で多くの人が水死しました。そんなに大きな津波ではないだろうと油断していたり、避難場所に逃げてきたのに、その避難場所さえも飲みこむほど大きな津波でした。また、津波から逃げるために自動車に乗っている途中で自動車ごと津波にさらわれて亡くなる人が多く出ました。
■地震のある国とない国のちがい
下の2つの写真を比べてください。両方とも、高速道路の橋脚です。左は、日本の高速道路、右はフランスの高速道路です。どうちがうでしょうか。
日本の高速道路の橋脚は太いです。これくらい太くして、コンクリートの中に鉄筋をたくさん巻かなければ、地震の力に耐えることができません。地震だけでなく、台風もやってきますから、強風にも耐えられるように頑丈に作らなければなりません。
また、日本の平野や盆地は、地球の氷河期が終わったあと、川が運んだ土砂などが積もってできたものですから新しくやわらかい地盤です。このため、地下深くまで橋脚の基礎を入れないと、橋が安定しません。
それに対して、地震のないフランスでは、日本のように太い橋脚は必要ありません。地震の力に耐えるように鉄筋をたくさん使う必要もありません。ヨーロッパのい地盤は、氷河期よりも前の時代にできていたため、古くてかたいです。日本ほど地下深くまで橋脚の基礎を入れる必要もありません。
橋や建物などを作るにしても、日本では地震に耐えられるようにするために、ヨーロッパよりも余分にお金をかけて頑丈に作らなければならないのです。
■津波によって大きな被害を受けてきた
海底を震源とする地震が発生した後は、津波に注意しなければなりません。
地震が起きると、震源付近では地面がはげしく上下します。これによって海水全体が急に押し上げられて、大きな波となって四方に広がって行きます。
津波は、海が深いほど速く伝わり、浅くなるほど速度がおそくなります。水深5000mの海ではジェット飛行機と同じくらい、水深100mでも高速道路を走る自動車と同じくらいの速さで伝わります。
日本は何度も津波の被害にあいました。海岸近くに住む人々は、高い防潮堤をつくったり、津波が来ないような高いところに家を建てたりしました。
東日本大震災が起こる前までの日本で一番大きな津波は、1896年(明治29年)の明治三陸津波と言われています。岩手県や宮城県の三陸海岸は日本を代表するリアス式海岸として有名です。このとき発生した地震そのものは震度2〜3程度のものでしたが、その後の津波により大きな被害を受けました。現在の岩手県大船渡市綾里湾では、本州で観測された津波の高さでは最も高い38.2mの「遡上高」を記録しました。
昭和8年(1933年)の昭和三陸地震でも、三陸海岸は津波の大被害を受けました。特に被害がはげしかったのは岩手県田老村(現在の宮古市田老地区)で、津波によって全戸数362戸のうち358戸が流され、人口1798人の44%にあたる792人が死亡しました。この被害をきっかけに、田老地区では町を取り囲むように、高さ10mの巨大な防潮堤が建設されました。
この防潮堤は、1960年(昭和35年)のチリ地震津波から田老地区を見事に守りました。しかし、2011年(平成23年)の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の津波は、この防潮堤を乗りこえてきました。
日本海側でも津波は発生します。昭和58年(1983年)の日本海中部地震により大きな津波が発生し、秋田県八竜町(現在の三種町八竜地区)で6.6mの津波を観測しました。震源が陸に近かったため、地震から7分後に津波が押し寄せ、海岸から逃げおくれた人が犠牲となりました。
平成5年 (1993年) に発生した北海道南西沖地震のときには、北海道の日本海側に津波が発生し、奥尻島を高さ約30mの津波がおそいました。 奥尻島では、その10年前の日本海中部地震でも津波の被害にあっていたので、そのときの経験からいち早く高台に避難しようとしたのですが、震源が島に近かったため、避難する時間が十分にありませんでした。
¶豆知識 − 津波の高さの種類
ふつう「津波の高さ」とは、ふだんの海面の高さから津波によって海面が上昇したその高さの差を言います。このほか、津波の高さをあらわす言い方として、「浸水高」または「痕跡高」、「浸水深」、「遡上高」があります。それぞれ測る高さがちがうので、どの高さのことを言っているのか注意しましょう。
● 「浸水高」または「痕跡高」=陸上での津波の高さ(ふだんの海面の高さから測る)。
● 「浸水深」=陸上での津波の深さ(地面の高さから測る)。
● 「遡上高」=津波が陸上をかけ上がった最高地点の標高(ふだんの海面の高さから測る)。遡上高は、気象庁から発表される「予想される津波の高さ」に対して、同じ程度の高さから、高い場合には4倍程度までになることが知られています。
■地球の裏側からも津波はやって来る
津波は、日本付近の地震だけで日本の海岸をおそうのではありません。日本とは地球の裏側にある南アメリカのチリで発生した地震による津波が日本にやってくることがあります。
1960年(昭和35年)5月22日午後3時11分(日本時間では5月23日午前4時11分)、南アメリカのチリ沖で世界最大の地震(マグニチュード9.5)が起きました。このとき発生した津波は太平洋を四方に伝わり、地震発生から15分後に約18mの津波がチリの海岸をおそいました。約17時間後にはハワイに津波が到着し、約22時間半後の5月24日未明に、最大6mの津波が岩手県や宮城県の三陸海岸を中心におそい、142名が死亡しました。
■予想をはるかにこえた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
2011年(平成23年)3月11日、宮城県の牡鹿半島の東南東130km付近の三陸沖を震源とし、震源域が岩手県沖から茨城県沖におよぶマグニチュード9.0の地震が発生しました。地震の大きさは、日本国内で観測史上最大、世界で見ても1900年以降に発生した地震では4番目の大きさでした。
この地震は、太平洋プレートと陸のプレートの境目で発生した地震です。震源域は長さ約450km、幅約200kmにわたります。震源の真上の海底が水平方向に約24m移動し、垂直方向に約3m隆起したことから、大きな津波が発生しました。
記録されている津波の高さは、福島県相馬市で9.3m、岩手県宮古市で8.5m、岩手県大船渡市で8.0mなどです。津波の遡上高については、国内観測史上最大となる40.5mが岩手県宮古市重茂姉吉地区で見つかりました。
沿岸の市町村では、震災前から「津波ハザードマップ」を作って、あらかじめ津波で浸水する範囲を予想していましたが、東北地方太平洋沖地震の津波は、その予想をはるかにこえました。これまで、津波の被害といえばリアス式海岸のことばかりだと思っていましたが、仙台平野では海岸線から5kmも内陸へ津波が入りました。宮城県石巻市では津波が川をさかのぼりました。このため、川沿いを中心に内陸まで海水につかりました。
■地震に対する技術が発達している国 日本
数多くの地震が発生する日本では、ほかの国に比べて地震に対する技術がとても発達しています。
例えば、地震によって建物などが壊された経験から、大きな地震にも耐えられるような建築技術や土木技術の研究が発展しました。こうした研究成果から、建物や橋などは大きな地震にも耐えられるように設計することが法律で定められています。
東北地方太平洋沖地震がマグニチュード9.0という超巨大地震だったにもかかわらず、地震でこわれたビルや住宅が多くなかったことに対して、世界中のニュースが日本の技術をほめました。
また、情報技術の発展も地震に備えることに役立っています。例えば、センサーにより地震の前ぶれとなるような地下の異常な動きを感知したり、地震の発生をいち早く感知して、ゆれ始まる前に地震が来ることを知らせる「緊急地震速報」もあります。緊急地震速報はテレビの地上デジタル放送や携帯電話などに送ることで、多くの人たちに地震が来ることを知らせることができるようになりました。
東北地方太平洋沖地震では、走行中の東北新幹線が、最初のゆれの9秒前、最も大きいゆれが起きる1分10秒前に非常ブレーキをかけて減速を始めていたことが分かりました。